絶滅危惧ビデオ大全 三才ブックス 著作/植地 毅 ゴミみたいなビデオを、古本屋とかレンタルショップのワゴン等から漁る趣味 ・・・絶版ビデオハントという趣味があります。 全盛期は、DVD時代の直前で、93〜98年とかそのくらいでした。 小さな街のレンタルショップが片っ端からつぶれ、 今のツタヤとかゲオとかの巨大レンタルショップのみの状況に切り替わる端境期。 そのころ、いろんなところで、 ビデオバブル期に出された膨大な量の中古ビデオが、 不良在庫として、叩き売られていました。 名作もありましたが、ほとんどはクズみたいなビデオ・・・。 同時にそのころ、今の「映画秘宝」につながる「悪趣味洋画劇場」という ムックが出版され、「ダメ映画を愛でる」という鑑賞法が定着しました。 で、物好きなハンターたちは、秘宝系の情報、ネットでのマニア情報をもとに、 かたっぱしから絶版ビデオをハンティング。 初期のヤフオクでは、そういうビデオの落札価格が大変なことになっていました。 そのあと、99年ごろから、DVD時代に突入し、 メジャー系の優良作品はほとんどが高画質になってDVD化。 マイナーなカルト作も、ネット上の、「絶版ビデオハンター情報」をもとに、 どんどんDVDになりました。 で、いまや、次世代DVD時代直前。 DVDですら、価格破壊の廉価盤。投げ売りは当たり前という状況。 まして、VHSなんてものは、ゴミ扱いもいいところ。 1本100円は当たり前。10円とか3円なんてのもあります。 この状況で「絶滅危惧ビデオ」ガイドとして出版されたのがこの本。 絶版ビデオハント全盛期のころならともかく、今、出すというのが凄いです。 本屋で見つけて、驚きました。 読んでみると、「今がこういう本を出す最後のチャンス。 今語らないと、未来永劫語るチャンスなんてない」ということらしいのですが。 それは確かにそうですね。 ゴミになったビデオの中でも極めつけのゴミに、 ほとんど無理矢理価値を見いだし、 「もしかしたら面白いかも」と思わせる、作者のその手腕。 そして、ゴミを愛するこころ。 最高です。 さすが、ジャンクなサブカル全盛期に、面白い本を何冊も送り出した作者ならでは。 でも、この本読んで「このビデオ見てみたい」とか思って、苦労して、 お金も使って、ブツをゲットしたりすると・・・ 結構ガックリくるだろうな。 本だけ読んで、想像の世界で夢をふくらませていたほうが良いと思います。 カバーのマッドマックス調の巨乳姉ちゃんといい、 良く見ないと書名がわからないような、暗さ全開のデザインといい、 全体が、90年代なかばの「悪趣味ブーム」を彷彿させるし、 まさに、すべてが過ぎ去って、終わっちゃった後の墓標というか、 鎮魂歌というか。ダメなビデオバブル時代への落とし前。 全体的に、マカロニウェスタンの悲しげな鐘の音が聞こえて来そうな色合いです。 (2007.09.08記)(あるSNSのレビューコーナーに書きました)
by uorya_0hashi
| 2008-01-14 15:33
| ジャンクな文化
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