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おもしろい漫画考 そのいち

「この漫画、つまんないや」って、漫画家である僕が
ウッカリ 言うと叩かれます。同業者から。
なので、あまり言わないようにしてます。

「面白いかどうかは、好みの問題。ウカツなことは言わない方がよい」
とか、アドバイスしてくれる人もいます。

でも、「そうかなあ」と思います。
たしかに「好み」の部分もありますね。
でも、そんなにややこしい問題じゃないんじゃないか
とも、思います。

普通の、一般読者は「面白い」か「つまらない」か
そんなに難しく考えないで、ごく簡単に、バッサリ評価する。
漫画専門の編集者もそうです。
はじめの5.6ページを読んで、「これは駄目だわ」とかバッサリやる。
それは、どういうことなのか。

最低限、それを守っておけば、「水準」はいくという「定石」があるのです。

だいたい24ページくらいの話だとします。

おそくとも、4ページめまでに、主人公が、主人公だと
読者にはっきり伝わるよう出て来ないとダメです。
主人公だと思ってたら、ただの通行人だったとか、主人公のライバルだった
とかいうのはダメ。
で、その4ページめまでに
主人公が、どういうやつか、どういう性格なのか、どういう能力があるのか、
どういう欠点があるのかを、てぎわよく、読者に伝えなければ駄目。
オッチョコチョイなら、登場してきてすぐにコケるとか、そういうの。
で、第三者の友達とかが、 ウワサ話のように「あいつはこういうやつだ」とか
ささやきあったりするとか。
「指名手配 強盗殺人犯」とかポスターが張り出してあって、
それを見て、賞金稼ぎたちがささやきあうとか、なんかそんなのです。
定石というか、そんなにパターンがあるもんじゃないので、
パクリだとか言われる筋合いのものではなく、どっかの漫画を参考にすればよろしい。

読者が「一目みて、ああ、こいつはこういうやつだな」と、想像できるような、
漫画のパターンの力を最大限使うのがよろしい。
筋肉ムキムキの大男とか、サルみたいな元気少年とか、絵に描いた美少女とか
一目みれば、だいたい「こんなやつ」とわかるのがいい。
複雑で、わかりにくい・・・いわゆる、よくいる普通の顔した普通の人ってのは
読者に伝わりにくいから駄目。
で、ほんの少しだけ、意外性とか、弱点があれば、それで充分。
強そうな大男だが泣き虫とか、美少女だと思っていたらオカマだったとか、
その程度でいい。

ばかでかい刀を背中にしょってるとか、片目だとか、盲目だとか、
棺桶ひきずってくるとか、小道具やら、扮装で
わかりやすく伝えるのも、定石です。これも、そんなにパターンはない。

6ページめまでに、「この漫画は、どういう漫画なのか」読者にわからせないとダメ。
コレをやってない漫画が、実は多いです。
主人公が面白そうなのに、その主人公が「なにをやりたいのか」
「どんな問題を解決するのか」「どんな状況と戦うのか」さっぱりわからない。
面白そうな主人公なのに「あー。これからどこに行こうか」なんて
悠長なことを言ってる。8ページあたりまで来ても、そんな有様なら駄目です。

要するに、6ページあたりまでに「試合に勝つ」とか「敵を倒す」とか
「革命を成功させる」「彼女のハートをゲットする」「一人前の職人になる」
「化け物が人間になる」とかの「目的」を示してほしい。
「目的に向かって努力するのが漫画だ」と、言い切るヒトもいるくらいです。
まあ、それは極端な物言いなんですが、基本としては、そうでしょうね。
それは、肝に銘じたほうがいい。

で、こういう部分で
読者は「おお、おれはこういう漫画なのだな。よしよし、さあ、どうなるの?
ホイホイ、早く先を見せて」となる。
クイズの問題の部分です。
問題が理解できなければ、 クイズの意味はありません。
答えを考える気もおこらない。すごく重要なことです。

目的を示すということは、打倒しなければならない「敵」とか「状況」を示す
ということでもあるわけで、
だから、言い換えれば、6ページめまでに、「敵」を出しておけ・・・と、いうことです。
その敵が強そうで強大であればあるだけ盛り上がります。
「謎を解く」という目的の話なら、解けそうもない謎のほうが、面白そうです。
「封建制」が、恋愛を阻むというなら、その封建制という状況が厳格であれば
あるほどいい。
なんか、そんなものです。

素朴な言い方をすれば、「敵は、主人公より強そうに書いておけ」ということです。

また、目的を示すということは、目的達成のあかつきのごほうびが
どんなもんか示すということでもある。
「平和」とか「美女と結ばれる」とか「王様になる」「大金持ちになる」とか
できれば絵にしやすいものがいいです。

これが「出だしが面白い」っていうことの正体です。
だいたいこういうことが、つつがなく、わかりやすく、最初の6ページあたりまでに
読者に伝われば、ちゃんと最後まで読んでもらえます。
編集者がいう、最初を読めばだいたいわかるって、いうことの正体。
たいしたことでもなんでもないです。

でも、こういう「漫画の定石」が、まるでわかってない新人さんが多すぎます。
定石をマスターしていて、そのうえで「外す」というのは、アリだと思いますが、
定石もよく理解してないのに、
「漫画というのは、そういうものばかりではないでしょう」とか
「こういう例外もあります」「決めつけるのは良くない」とか
言う、自称漫画通が多いのには、辟易します。
どんなコトにも「基本」はあるので、それを軽んじてはいけない。

定石を外しても、ちゃんと、面白いものを作る人はいます。
天才とか、「おそろしく個性の強いひと」、独特の文法のひと
なんかがそうですが、そんな人は100人にひとり。
99人は、定石とか「よくあるパターン」を学んで、
それを自分なりにアレンジして、「ギンギラギンに研ぎすます」ことを考えたほうがいい。

大手の編集者は、たいていの場合、こういうことがわかっています。
だから、よくわかってない新人さんには「こうしろ」と指導してきます。
それが嫌だというのも、気持ちとしてはわかりますが、
せっかくの「定石を学ぶ機会」を放棄しては損です。
自分のほうから、積極的に「漫画のパターン」を学ぶくらいじゃないと損です。

編集に習わなくても、漫画を研究心を持って読んだり、
映画の脚本の研究書とか読んでみれば、だいたいわかるんですが、
どうも「スクリーントーンの削り方」だとか
「服のしわの表現方法」とか、みための些末な方向にばかり
若い人は目がいくみたいですね。

だから「漫画家が馬鹿だ」
「漫画家は絵を書いてればいい。編集が話を考えるから」とか、
極端な話が出てきます。
そういうコトにも問題は、大きいものがあるのですが。
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by uorya_0hashi | 2006-10-30 22:12 | 漫画関連