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メジャーの流儀

マイナーな世界でデビューして、
誰にも注目されず、自分の頭だけで
ネタをひねくりまわし、おもしろい漫画にするため、
いろいろ考えたし、勉強もやりました。

で、後になって、メジャーの版元の現場にかかわったんです。
だから、「メジャーの流儀」というものが
なかなか理解できず、悩んだりもしました。
ギャグ漫画をやってたから・・・という側面もあるのですが。

「メジャーの流儀」ってことは、どういうことか? っていうと、
主にストーリー漫画にかかわる話なんですが・・・・。

メジャーの漫画では、お話(キャラクターとか設定、展開)は
完全に編集部主導で、
漫画家は、その注文に答えて、「上手に、漫画の形にしていくのが仕事」
って、いうことです。

漫画家のほうから、「こういう話にしたい!」というのは、
ないわけじゃないのですが、まあ、100の漫画のうち、5本くらいかな。
そのくらいの割合です。

編集部のほうは、「漫画家にお話をまかせておくと、
売れそうもないものになるから」とか
「ネタにつまったから、できません・・・とか言って、逃げたりしたら、どうする!」
とか、保険のつもりなんでしょうね。
そんなところから、発生したやりかたなんでしょう。

でも、実際は、もっとアグレッシブというか、実も蓋もない感じです。

持ち込み用には、短編の読み切りを完成させて持って行くのが
普通なのですが、それは、ほとんど重要視されません。
どんなに一所懸命書いても、だいたい、名刺がわりくらいの効果しかない。

パラパラっと、見て、
「絵はイケルかも」って判断されると、
「どう?  いま、僕、異種格闘技ものの漫画の企画考えてるんだけど、
やる気ない? 君には、合うと思うけどなあ」
「はあ・・・・・。 えっ? そういうの、苦手で、見たこともありません」
「見れば、おもしろいよ。すごくウケてるんだ。
僕、ナントカって団体の営業に知り合いがいてね・・・。
マンガにするのはどうかって話があるんだ」
「はい。あの、でも・・・子供同士の友情ドラマが描きたくて、この漫画書いたんですけど」
「うん。まあね。それはよくわかるよ。
でも、格闘技ものの中でも、少年たちの友情は書けるじゃない? どうかな」
「でも・・・・・・・」

「ああ。まあ、別にね。無理強いしても、アレだから。ま、いいけど。
他に行っても、描きたいようにやらせるところなんてないと思うけどね!
ま、こちらも好意で言ってるだけでね。当人にやる気がなければ、
しかたのない話なんで・・・ま、頑張ってくださいよ」
「あわわ、やります! やります! やらせていただきますう!」
なんて、話は、別に、よくある普通の話です。

たまたま、支配性のつよい編集さんに当たったんだろう・・・なんて
初めのうちは思うものなんですが、
それは、間違いで、程度の差はありますが、
メジャーの編集者で、「あいつは仕事ができる」と言われるひとのほとんどは
このタイプです。
編集者というより、「影の原作者」。

僕の、後輩に、漫画家やめて、メジャーの編集者(嘱託)になったのがいますが、
そいつなんて、自分で「絵コンテ」 というか「ネーム」「コマワリ」までやって、
「この通りに描け」と、強制しているらしいです。

なんで、こんなことになったか・・・?
ちょっといきすぎだろ。漫画家は絵をかくマシーンか? とも
短絡的には思ってしまうのですが、
まあ、現場を見ると、しょうがないのかなあ・・・ということもあります。

新人賞に応募してきた、読み切り作品の山を
かたっぱしから読んだことがあるのですが、
どれもこれも、つまんない・・・というか、そもそも漫画の形はしてても漫画になってない
という、すさまじいのが8割がたで、
「あれ? まともな漫画だ」というのが1割。
のこりが「面白いけど、この雑誌には載らないでしょう」という感じ。
個性的すぎて、好きだという人もいるだろうけど、嫌う人のほうが多いだろ
という漫画とか、犯罪者か、ちょっとオカシイヒトが書いたんじゃないか?
とか思いたくなる漫画。雑誌に載せると、世間から叩かれそうな漫画のことです。
こういうのは、載せる場所さえ、よく考えれば、必ずよい展開が見込まれます。

で、1割がたある「まともな漫画」の話ですが・・・。
「まともな漫画」というのも、まともなだけで、面白いとこまではなかなかいかない。
読んでて「なるほどなあ」って納得しちゃうんです。「ふーん」で終わっちゃう。
「面白いなあ、これ」って、なかなか思えない。
ほんとに、「ちょっとだけでも面白い」のは、ちょっとだけ。
というわけで、新人賞の漫画読むのは、かなりしんどい体験でした。

なんでか? って、言うと、下の日記に書いたような
「漫画の定石」をきちんと把握してないからです。
そのままじゃ、使えない。それがほとんど。

なので、編集者は、そういう ヒトに「定石」を教え、さらにジャンプアップさせるのが
仕事・・・という感じなのですが、
昨今は、悠長にかまえてもおられず、レクチャーをカッ飛ばして、
「俺の言う通り描け。それがメジャーのやりかただ!」
つーことになっています。
そういうやり方しないと、週刊とか、まあ、月刊でも、最近のは
異様にページ数多いですから、漫画雑誌が作れない。間に合わないんです。

実際、週刊連載なんかやると、漫画家のほうも、絵書くだけで、目一杯で
話は誰かにやってもらわなきゃ、しょうがない・・・と、いう物理的なものもあるんですが。

とにかく、そんなこんなで、
「メジャーとは、編集者の要望に答えるのが当たり前・・・・
というか、言われたとおりにしないとダメなところ」
これが、常識。メジャーの流儀です!

・・・さて、無理矢理、お話をあてがわれ、
それが面白くて、書き手の漫画家に合えばいいのですが・・・。
これがなかなか難しく「やってみないとわからん」の世界。

往々にして、お話と書き手とが
「滅茶苦茶な取り合わせ」のパターンも多いんです。

「絵がうまくて、人物も上手だから、野球漫画書こうよ」ということで、
野球なんて、見たこともない書き手に野球漫画書かせたり、
性格が真面目で深刻な雰囲気の人間に、阿呆なコメデイ書かせたり、
「清貧の思想」みたいな家庭にそだったヤツに「マネーの虎」みたいなのを
書かせようとする。

たまに、不思議な作用がはたらき、すごく面白い漫画になることもありますが、
だいたいは、「あ〜あ。やっちまったよ・・・」
可哀想な結果におわり、「ま、今度がんばってよ!」で
チョンです。
こんなことがあると、だいたいみんな、半年は立ち直れない。
そのままやめちゃうのも、よくある話。エロの世界に行くもの、普通。

まあ、こんな世界なんです。メジャーというところは。

だから、「メジャーで頑張るぞ!」という人は、そういうことを
よく、覚悟して、頑張ってもらいたい。
半端な主張とか、思想とか、好き嫌いとか
そんなようなものが通じる世界では、ないということです。

高性能な歯車になりきって、
大金を紡ぎだす、巨大な「日本の重要なコンテンツ製作システム」の一部として、
みごとに機能する!
そのくらいの気概がないと、イカンです。
軍隊に入って、戦争に行くくらいのつもりで、がんばれ! と、言いたい。

中途半端に、世間を知って、中途半端に賢いと、不幸。
純真で、素直で、気迫にみちて、健康で、絵がうまくて、可愛い女の子が書ける
若いひとは、「頑張れば」大金をつかめますので、
メジャーのシステムを信じて、頑張るべし! です。

僕は、最初に書いたように、
メジャーの門を叩くのが遅すぎて、
こういうことに気づいたのが、30すぎでした。
そんなんじゃ、駄目ですよ!
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by uorya_0hashi | 2006-12-08 17:31 | 漫画関連