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二階に上げて梯子をはずす・・・という記事

を書きました。そのつづきというか、まあ、そんな感じのお話。

あの記事を読んだ知り合いの方から、言われて、
「ああ、そういうふうに思うんだ」と、
初めて気がついたんですが、
「二階に上げて、梯子をはずされた漫画家」は、僕じゃありませんよ。

僕は、言っておきますが、「二階にあげてもらったような経験」はまるでありません。
二階どころか、玄関から入らないで、裏口から入って、土間で寝てろ・・・
みたいな漫画家です。
なんか勘違いしてる人がいるな。

単行本も「なんとかのひみつ」とか「職業ナビ」みたいな
書き下ろしの「学習漫画単行本」しか出したこと無いし。
20数年も、漫画書いてきて、まともに
「まとまった単行本」なんか出したことありません。
よく、それで、漫画家続けているなあ・・・と、自分でも思いますが、
まあ、そのくらいの泡沫漫画家なんです。

「印税」とかいうのも、もらったことないんじゃないかな。
上に書いた「書き下ろし学習漫画単行本」も「買い取り」という形式で。
1冊書くのに、ページ何千円とか何万とかという計算で、
1回、ギャラもらったら、それっきり。
何度、版元が増刷しようが、一文も貰えないという契約です。

よく、世間では、
単行本何万部売って、印税ウハウハという漫画家さんの話が話題になるから、
みなさん、誤解してますが、
売れない漫画家の扱いなんて、そんなもんですよ。

で、「二階に上げて、梯子を外された」のは、僕の知り合い・・・
の漫画家さんなんです。それをいくつか、適当につなぎあわせて
デッチあげた、根も葉もあるけど、本当じゃないお話。

今回も、そんな感じの漫画家さんのお話です。

僕はその先生が、大手版元で栄華をきわめていた頃から
「読者ページ専業漫画家」として、そこの版元に出入りし、
なんだかんだ、裏話とか、編集さんそのものに接していましたから、
多少は、いろいろ聞いて知ってる・・・って、だけです。
で、聞いてて「ひでえなあ」というふうに思ったことも。

いま、ふと、思い出したんですが、
その「売れっ子」だった漫画家さんのお話で、こんなのがあります。

大手版元で、野球漫画を立ち上げることになりました。
選ばれたのが「その人」なんですが、
その先生は、野球の「や」の字も知りません。
でも、このチャンスをモノにすべく、自らも草野球を始め、
野球漫画を研究しまくり、モノになりそうな感じになってきました。

お話の「あらすじ」は担当さん。二人で必ずこのチャンスを生かそうと
必死に頑張りました。連載が始まり、それなりに面白い野球漫画は、
子供たちに評価され、人気が出ました。

そのころ、僕は、まだ学生でしたが、
その人のところに手伝いに行きました。
で、驚いたことがあります。

その人の「仕事場」に、
過去の「名作野球漫画」を拡大コピーして、
見せ場などの「見せ方」を事細かに分析。
こういうシーンでは、ここが重要。読者の目の動きはこう流れ、
ここで止まるから、ここにこういうシーンがなくてはならない。
ナントカ先生のうまさはここ。ここを見習うべし・・・とか
赤ペンで、ものすごく細かく指示が出してある。
そんな野球漫画のコピーが、束になってあったのです。

僕は、それまで、感覚的にしか、漫画をとらえていなかったので、
これを見て、かなりビックリしました。
「すごいですねえ。さすがプロ。本気で漫画に取り組んでる感じがビンビンですよ」
「ああ、それ。それ、担当の○○さんが、書いてくれるんだよ。
けっこう、うるさいけど、凄いよな。本気で、俺の漫画のこと、考えてくれてるんだよ。
俺も、本気で答えないとな! がんばるぞー!」

なんと、この「漫画の解析書」は、担当さんの仕事でした。
すごいなあ。大手版元の編集はそこまでやるのか。

そう思って、徹夜で作業してると、真夜中に
「ごくろうさま〜! うまいもの食べに行こう」とか、
その○○さんが、絶妙のタイミングで現れます。
で、漫画エネルギーに満ちた、やりとりを先生とかわしたりなんかして、
「熱い漫画熱」は手伝いの僕にも伝染したものです。

で、何年かたって・・・・
その○○さんが、編集長になって、僕の前に現れました。
そのひとが編集長してる雑誌の読者ページを担当したわけです。
むこうは、当然、僕のことなんて、忘れてました。
で、読者ページをたんたんと仕上げ、
それなりに信頼も獲得したころ、編集長にごちそうになる機会があり、
「その昔」の話になりました。
その昔といっても、10年はたっていなかったと思います。

「編集長、あの野球漫画の担当だったんですよね!」
「へえ。よく知ってるね」
「いや、僕、あの漫画、手伝いに行って、あの現場で、編集長に会ってるんですよ」
「え〜! そうなの」
「いやあ、感動したなあ。編集長が、ありとあらゆる野球漫画を解析、添削して
資料用にファイルつくってたの、見ましたよ! あれ見たときは、言葉を失うくらい
感動した。編集者のカガミですよね!」
「あ! あれ、見たのか? ははははは! いやあ、まいったなあ。そんなことを
知っているヒトにいまさら会うとは思わなかったよ!」

「いやあ。あのころは、僕も若かったしねえ。情熱があったんだなあ。
極めつけの野球漫画を作るんだ! と、本気でねえ。 いやあ、懐かしいな」
「その情熱が実をむすんで、あの漫画、大ヒットしたじゃないですか。
アニメにもなったし・・・」
「うん。まあね。ははははは!」
「でも、あの先生、最近、この会社の本では、見なくなっちゃって・・・」
「あー。まあね。うん。そうだ、君。彼のこと、なんか知らないか?」
「いやー。僕もここんとこは・・・。あ、でも、こないだ、学習漫画書いてるの見ましたよ」
「そうか、元気でやってるんだ」
「あ、そうそう、年賀状に引っ越しました・・・とか書いてあったな。」

「え? どこから引っ越したの?」
「え・・・・どこからって・・・? えーと、確か・・・練馬だったかな、そこのマンションから、
どこそこに引っ越すって・・・・」
「あ! あいつ、まだ、練馬のマンションにいたのか!」
「は?」

「いや、あの練馬のマンション、俺が彼に買わせたんだよ!
ほら、いきなり漫画が売れて、節税対策とか、いろいろあるじゃん。
で、俺が、彼の代わりに、いろいろ不動産屋まわって、手頃なマンション買わせたの。
ローンの計画も俺が考えたんだよ。リッチないいマンションだったよー。
彼、結婚したばかりでさ、奥さん、少女趣味だから、内装もそれに合わせたり
なんかして・・・バブル期だから、すごい値段だったよー」
「へえ。編集者って、そんなことまでするんですか?」
「漫画家には漫画に専念してもらわなきゃなんないんだ。まあ、そのくらいはねー。
まあ、俺が、そういうのも好きだってのがあるんだけどさ」
「でも、そんな高い買い物して、その後、ヒマになったら、困りますよね」
「そうなんだよ! それなのに、あいつ、俺の後がまの担当と大げんかしちゃってさあ。
『干してやる!』『やってみろ!』とか、なんとか無茶苦茶な・・・.馬鹿だよね。
編集と喧嘩するなんて。・・・やっぱり、天狗になっちゃったのかなあ?」

「へえ・・・」
「だから、さっさとあのマンション、売っぱらっちゃえば、良かったのに。
つうか、もう、そのテしか、選択の余地はないのに、まだ持ってたんだ・・・。
ははははは! 馬鹿だよなあ。まったく。はははははは!」

いやあ。愛想笑いで付き合いましたが、
こんなに「笑えない話」はありませんでした。
二階に上げて梯子を外す・・・・というか、二階に上げて、後は野となれ、山となれ
つうことなんですが。

読んでもらえば、わかるとおり、怖い話で。
(本文は、またテキトーにアレンジしてありますが、根も葉もある話です)
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by uorya_0hashi | 2007-04-26 19:40 | 漫画関連