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マンガ編集者狂笑録

某SNSに書いた日記の再録です。
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長谷邦夫先生の新刊、小説集を読み終わりました。
漫画界で有名な、伝説的漫画編集者を主人公にした
小説短編集。

この本のあとがきにもありますが、
この本は「小説」で「評伝」じゃない・・・とのことで、
そこんとこは気をつけておかないといけません。
とはいえ、実在の人物名で出てくるから、
すぐに「フィクション」だということを忘れちゃうんですが。

で、短編ごとに、いろんな小説的手法を手を変え品を変え、
試しているので、読んだ印象も、内容以上に手法により、
違ったものに感じます。

自分の好みは、スクエアな、「普通の小説」なので、
そういうモノのほうがいい感じでした。

一番好きなのが、「トムとジェリーの青春 内田勝・宮原照夫の巻」で、
少年マガジン編集部の伝説的編集長2人のライバル関係を書いたもの。
2人の「葛藤」が鮮やかに浮き彫りされていて、文句なく面白い。
白と黒。右と左。表と裏。陰と陽。この話だけで長編にしてほしい。

酔っぱらいオヤジのクダまいたような毒舌が延々つづくような
「酔わせてみせろよ ウソ虫 壁村耐三の巻」も好きだなあ。
読んでて、目の前に「酔っぱらいオヤジ」がいるような気になる。
愛憎うずまく手塚番の、一言では語れない、複雑な「熱き思い」。

「恋人たち 丸山昭の巻」は、手塚番を外されて、一安心しながらも、
なんとなく寂しい編集者が、次世代の漫画家を育てる話。
名コーチストーリー。トキワ荘アナザーバージョン。

「かんにんしてやゴメンやで 松坂邦義の巻」
この編集者さんのことは、全然知りませんでしたし、この小説を読んで、
どういう業績があったのか、そういうこともよくわかりません。
途中でちょんぎれたような小説。作者が、あえてそうしてる。
ただ、なんか一番、自分に近いメンタリティの人なので、気になって
しょうがない。
川崎のぼるを大阪で見いだし、売れっ子に育てるつもりが、
自分が世話になってばかり・・・という、情けないけど愛すべき編集者。
キャラクターがいいんですね。

この4本が、特に自分好みでした。

読んでて、なんか腹立ったのが「遠ざかる九龍へ 長崎尚志の巻」
単に、僕が「この編集者のことが嫌いだ」というだけかもしれませんが、
一番実験的な手法で書かれた小説だということもあるのか、
これが「巻末」なことが、なんか残念でした。
たぶん、好みの問題でしょう。

全編読んで、面白いなあ・・・と思ったのは、
すべての編集者が、手塚番だったり、なんらかの形で
手塚先生とかかわったことのある人。すべての話に手塚先生のことが
出てきます。
それだけ、手塚先生が、巨人だったということか。

だから、この本、「裏手塚伝」とも言えるような。

漫画について語る時、作品か、漫画家から語る事が
普通になってますが、実際のところは、
漫画の半分は編集者がこさえてるようなもので、
(特に週刊誌の時代になると)
この本では、そういうことを、まとめて、世に伝えたい・・・
そんな意図も感じます。
漫画家である長谷先生が、こういう小説を書いた・・・
というところに、ヒネリというか、いろんな思惑があるんでしょうね。

最近、流行の「漫画学」みたいな、大学の先生が書いたような本を
読みますと、「漫画家が、自分の漫画のすべてをコントロールしている」
ことを前提に、いろいろ語られているんですが、
あれ読むと、「外の人には、こういうふうに見えるのか」みたいに
思うもんなあ。「実際は、編集者が書かせてるのになあ」とか。

長谷先生、ああいうの読んで
「う〜ん、違うような気がするよ。実はね・・・」とか
思ったんじゃないのかなあ。わかんないですけど。

こういう本が出ますと、
「困るなあ。勝手に、はしょって、語られては。
本当の事は、自分で書くわい!」とか、大元のモデルたちが
自伝本、ばんばん書きそうだな。(もう既に書いてる人もいますし)
そういうなのを、「あおる」ような目的もあるのかもしれません。

「漫画の怪人図鑑」みたいな感じもしますね。
続編とか、まだまだありそうだなあ。
有名なあの人とか、あの人の話も出ていない・・・なんか、そんな気もする。
パート2を期待します。

「昭和の漫画好き」なら、読むべし。

で、この日記にいただいたコメント----------------------------------------------

Uさん--------------------------------------------- 2008年05月19日 21:28
実はまだ未読なのですが、大阪の川崎のぼる先生と関連ある
松坂邦義さんという方はこれまで存じあげなくて、
興味深いもののひとつです。

大阪の貸本文化の裏側、
彼らが持っていたと思われる東京への思いも含めて
ドラマ性が高く、こうした話もマンガ史の一面として
もっと知りたいです。

長谷邦夫------------------------------------------ 2008年05月19日 22:12
>うおりゃー様
非常に「正しい」読み方で、嬉しかったです。
文句ない感想でした!

松坂さんについては、雑誌「貸本マンガ研究」での
インタビューのみを参考に書いたのです。
全て、本人取材ナシですから。

これまでの評伝や自分史的エッセイや、雑誌記事からの
取材のみ!です。ですから「小説として読んで下さい}と
いうことでした。

貴兄のように、読んでいただけたら、もう、作者冥利に尽きます。

丸山さんからはメールが来て
〜小説ってことだけど、読者は長谷さんのうまさに乗せられ
おれって、こういう人間だって、思われちゃうんだろうな〜。

そんなボヤキも聴こえました。
でも、そうした小説内の性格も充分あったことを
認めておられます。(笑)

どなたかが、少女マンガ編集者小説を書いてほしいです。
これは口頭取材が絶対に必要です。

経費の出せるメジャー版元が、企画すべし!ですよ。
ぼくは、ビンボウ人です。
この余裕はありません、正直言って…。

>U様
大阪貸本の裏となると、中野晴行さんが…。
ぼくは、まるで知らずに、思い切って書いたわけです。

うおりゃー----------------------------------------- 2008年05月19日 23:16
>長谷邦夫先生

コメントありがとうございます。

そうですね、漫画なんかでも、そういえばそうでした。

僕も、現役スポーツマンの伝記漫画、書かされた時、
予算やら、先方の都合やらで、まるで「直接取材」できず、
しょうがないから、ナンバーとか、すでに出版されたその選手の本とか
読んで、
「こういうことだったんだろう。こういうことが言いたいんじゃないか?」
とか、想像しながら適当にかいつまんで、デッチあげました。

で、その場合は、肖像権とかありますから、
漫画の下書きをいちおうチェックしてもらい、
「まあ、だいたいこんなんでいいです」つうことで書きました。

でも、読んだひとはみんな、
「すごいなあ、あの有名選手に会って取材したの?」なんて
感心してくれましたからね。

この小説も同じ構造なんですね。

はっきり言って「ウソだらけ」でも、
本質的に間違ってなくて、「あいつならこのくらい言いそうだ」とかいう
ヤリトリは、面白い。事実以上に信憑性がある。

考えてみたら、梶原一騎先生のプロレスものとか、一連の
実録風スポーツものも、「そんなことあるわけねえだろ」という
ウソだらけでした。ウソを強引に本当のこととして、つじつま合わせたり
すごいことしてましたが。

ようするに、虚実いりまじったグレーゾーンが、おいしいんですね。
お金かけなくても、人の心に訴えかけるものはできる・・・というか。

東映の実録ヤクザ映画も、実際とはかなり違うけど、
あの時代のエナジーはクッキリ切り取ってて、異様に面白い。
そういうものなんでしょうね。実録風小説とか実録風漫画って。
わかっていても、つい、だまされちゃう、東スポ的な楽しみかもしれません。
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by uorya_0hashi | 2008-05-27 17:12 | 漫画関連

県民のヒ・ミ・ツ発売中!

以前、やたらと似顔絵 を書かされた・・・
というか、たくさん仕事をいただいた本が
先月20日に出まして、
それなりに話題になってるみたいです。
http://www.pronweb.tv/newsdigest/080424_kenmin.html

あんまり似顔絵は自信ないんですが、「まあそんなもんだろ」という出来。
各都道府県出身の有名人によく似た人(名前は出してない、肖像権に配慮?)を
47人書きました。大変だったなー。こんな感じです。
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で、この本がアマゾンとかで売られてるんですが・・・そのページを見ると・・・
なんかスゲエな。俺が一人で書いた本みたいに書かれてる。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4872576985/250-8103367-3214628?SubscriptionId=15JBHWP7TH9QYT1RMHG2
http://books.livedoor.com/item4872576985.html
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=32059691
実際は、47都道府県出身の漫画家、総勢50数名で手分けしてるんですが、
たまたま50音順に並べると、僕の名前がトップにくるらしい。
「たまたま」とはいえ、ありがたいことです。

47都道府県、それぞれの県の出身の漫画家
(1つの県を3人とかで手分けしたのもある)に、
漫画を書かせるって、アイデアはイイんですが、
発注はめんどくさいし、原稿の回収もめんどくさい。

漫画家なんか、約束守らないのは珍しくない非社会人なので、
「ちゃんと約束守る」なんて信用するのが間違いだというのに、
そんなの50数名にやらせるなんて、
僕に言わせれば自殺行為というか。

思いついても、やらないだろ、普通。
どうりで、原稿入れてから、なかなか本が発売されなかったワケだよなあ。
編集プロダクションの担当さん、ご苦労さまでした。

「こんな本、よくやるよなあ。編集、地獄のように面倒くさい」
「・・・ちょっと待て。こんなに多人数で寄ってたかって書いたら、
ギャラの分け前、どうなんの?」

まあ、装丁もしっかりしてるし、ページ数も多くて,
そのわりに定価が異様に安いですから、買ってください!

内容につきましては、
ネタの「県民性の話題」は絶対面白いので、読む価値は十二分!
みんなで買おう!
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by uorya_0hashi | 2008-05-14 22:18 | お仕事関連