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設定資料集シンドローム

友達である
かとうひろし先生が、
ちょっと前から「まんがの作り方」という記事をブログで書いてまして。
http://hkato.sblo.jp/article/28978359.html

それにコメントしようとしたら、
長くなってしまったのと、よく考えると、記事のコメントとしてはズレてるような
感じになってしまったので、
自分とこに並べておきます。

かとう先生、すんません。

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最近の若い漫画家見習いみたいなひとは、
アニメやゲームの設定資料集みたいなのを
たくさん書いてから、
「この世界観と、このキャラで、どういう話にしようかなあ?」とか考えるので、
とくに「短編漫画」は、うまく書けないんですよね。

自分の中で「説明しなければ!」という要素を、
どんどん、勝手に増やしてしまうから、
20ページしかないのに、登場人物が10人以上
いたり、複雑な世界観の説明だけで
3ページ使っちゃうとか、妙なことになる。

一番無難なのは、
「ややこしい説明がなくても、なんとなくわかる設定」
(学園ものとかスポーツ、複雑すぎないファンタジーなどなど)で、

「なんとなくありがちなような気もするけど、
ちょっとだけ変わっていて『お?』とかいう
新味があるキャラクター」
(美少女だと思ってたらオカマだとか、霊媒師だけどウソツキだとか、サルに借金してる桃太郎だとか)

そんなようなくらいにとどめておいて、

漫画の中で起こる出来事に、
面白いアイデアが効いていて、
ソレが「そのキャラならでは」の解決法で解決し、

お話が終わった後に、
読者が、キャラクターに好感を持ってくれて、
(変なやつだと思っていたが、なかなか面白い
キャラだなあ・・・くらいに思わせるということ)

「こういうの、また読みたいな」という
読後感があるようなのが、

満点の出来ではないにしても、
80点くらい取れる短編漫画だと思います。
20とか30ページなら、そんなもんで
充分です。これなら新人賞の佳作レベル。

設定とか前置きの細かい部分が重すぎると、
それに、お話がひきずられて、あとの展開が
苦しくなる・・・
自分で勝手に壮大にしたイメージに
お話が押しつぶされる・・・
そんな感じがあるから、
そういう「設定集」みたいなのは、
やりすぎない程度にとどめて、

「自分は何が書きたいのか」とか
「どういう話で、読者にどんなふうに思ってもらいたいのか」という大枠を
早いうちに、真面目に考えて、
(ハードタッチなものにするのか、コメディにするのか、エロ含む青年向けか、
読後感が苦いモノとか、問題提起するような社会性のあるものだとか)

できれば、
「自分が、最も得意な漫画の雰囲気に持って行く」のが
特に「短編」の場合は、うまくいくと思います。

「アニメ」や「ゲーム」は多人数で作るため、
指針となる、きちんとした「設定」が重要なんですが、
漫画の場合は、「ひとり」で作れますから、
「設定」や「登場人物」なんか、行き詰まったら、すぐに
変更して、書き直すから、テキトーでいいんだ・・・とかいう、
イージーなノリのほうが、

結局、うまいぐあいに、つじつまがあって、
なんとなくまとまるものです。

まあ、こういうのも、みんな・・・・
かとう先生の言ってる事と
ほとんど同じだと思いますけれども。
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by uorya_0hashi | 2009-05-09 12:34 | 漫画関連

新宿インシデント

http://www.s-incident.com/

高校生の次男と見に行ってきました。熊谷に。
映画を劇場で見るのは3年ぶりなんじゃないか?

「あのジャッキーが悪役!」というのがウリの映画なんですが、
そういうコトはどうでもよく、
大好きな映画監督・・・イー・トンシンの映画だから、
見に行きたかった。

息子のほうも、「フツーのジャッキー映画じゃない」ということは
ネット等で調べて、周知のことでした。

監督というのは、
もともと俳優で、自分で脚本も書く監督さん。
いままでにも、監督作の・・・・
野獣たちの掟」「つきせぬ想い」「フル・スロットル 裂火戦車」
「ワンナイト・イン・モンコック」なんてのを見ましたが、
ハズレなんか一本も無く、みんな面白いんで、
自分の中では、ジョニー・トー監督と並ぶ、
香港のビッグ2のひとり。

どの映画も、多くの登場人物の性格設定や、人物間のアンサンブルが
みごとに設計されていて、話にムダがないし、
登場人物に「入れ込めるようにする」力が物凄い・・・
映画的エモーションを「人物方面」から、高めていく「名人」なので、
映画が盛り上がって行くと、観客としても、
キリキリと緊張感が高まり、ヘトヘトになるような・・・
「収斂性の高い」お話作りをするヒト。
あと、貧乏人とかの小さな共同体を描くのが、異様にうまい。

この監督、「いい話ができないと映画撮らない」という巨匠なので、
極端に寡作。
そんな監督がジャッキーと組んで、どんな映画になったのか?

しかも、舞台が新宿歌舞伎町。竹中直人はじめ、日本人俳優もたくさん出演。
見ない訳にはいきますまい!

見てきました。

なんと! 
上映2日目、黄金週間の土曜日の夕方4時半からの上映なのに、
観客が・・・7人しかいないという、とんでもない「不入り」!

ひでえなあ。
そりゃ「ジャッキーの悪役なんか見たくない」という
ジャッキーファンの気持ちもわかるが、当たらないのにもホドがあるだろ。


で、感想です。

ドスンと来る、重く、暗くなるような映画です。後味は爽やかではない。
悲しくなってきます。いろいろ考えさせられる。
かなりの傑作。見て、絶対、損はしません。
いつものジャッキー映画のムードは、微塵もありません。
ジョニー・トーか、石井隆か、三池監督とかの映画のムード。
トンシン監督なら「ワンナイト・イン・モンコック」の路線。

で、日本刀で腕が飛ぶとか、押さえつけて顔面ナイフで一文字に切り裂く
とか、腹から内蔵が出るとか、ドス黒い、やりすぎバイオレンスが
満載なので、そういうのが苦手な人は見ないほうがヨロシイ。
見てるだけで痛くなり、銀紙噛んだときのツバみたいなのが出てくる。
やたらに濃くて、怖い顔が続々。
子供は見てはダメ。なんと、ジャッキーがセックスしてるし。

基本的に、ヤクザ映画です。
竹中直人が出ていて、新宿が舞台で、夜の汚らしい街角満載です。
だから「石井隆」の匂いがして当然なんですが、それ以上に
トンシン監督は、絶対に「石井映画を参考に」してると思いました。
違うのは「雨が降ってない」とか、そんくらいのモンだろ。

「仁義なき戦い」とか、深作映画が好きだったり、
石井隆が好きな人は、早く見に行ったほうがいいです。
あんなに不入りだと、すぐ公開打ち切りだろうから。

話の筋は「大雑把」に言うと。(以下ネタバレ)







純朴で貧乏な田舎者の大陸中国人ジャッキーが、日本に密入国してきて、
最初は真面目に働くんですが、
日本社会とヤクザに搾取、抑圧されまくります。

その過程で、不真面目な刑事竹中直人と友達になる。

で、同じような惨めな、不法滞在者中国人と、
貧しいながらも、助けあいながら、
インチキテレカを売ったり、万引きしたり、インチキクレジットカードなどの
悪事を働くようになる。だんだんと犯罪者になっていく。
朱に交われば赤くなる。人間は必ず、状況に慣れるもの。

そのころ、三和会という山口組みたいな広域暴力団の跡目争いがあり、
若頭かなんかの加藤雅也が、争いの果てに、
「親分を殺し、頂点に立とう」と思い立つ。

で、ジャッキーと加藤雅也に、やむをえない「いきがかり」が生まれて・・。

ジャッキーは「貧乏で悲惨な仲間の中国人を助けるため」取り引きし、
ジャッキーがヒットマンとして、親分を殺す。
そのかわり、歌舞伎町のシマを、
加藤雅也新会長からまかされるわけ。中国人ギャングの頭目になる。

でも、ジャッキーはそこで満足しちゃって、
「もう、仲間は安心だ。これからは、危ない橋を渡らずとも、
普通に商売して行きていける」とか言いだす。

子分みたいになってた、中国人の仲間たちにシマをまかせ、
自分は埼玉かどこかで、中国人の恋人と「耕耘機の中古販売会社」を始める。

そこに、竹中直人刑事がニヤニヤしながら、やってきて、
「うまくやったな。わかってるぞ」とか
「次は見逃さないからな」とか言う。

いっぽう、シマをまかせた中国人の仲間たちは、
お金が入ると、ますます強欲になり、歯止めがかからないような状態で
暴力沙汰をおこし、麻薬を売りさばき、どんどんエスカレート。

(これまでのいきさつから・・・中国人の横暴を我慢していた)
三和会のヤクザと衝突することになる。

中国人の横暴を許した加藤雅也は、
中国人を嫌う日本人の子分&日本の首領(長門裕之)に見限られ・・・・

中国人ギャングと日本人ヤクザの全面対決が間近に迫る。

竹中直人が、また、ジャッキーのとこに来て、その話をする。
「かなりヤバイ状況だが、ほっといていいのか?」

ジャッキーは、
「知らん顔していて!」という恋人の制止をふりきり、
竹中刑事と、仲間の事務所のある新大久保かそこらのビルに乗り込む。
「なんでこんなことに! やめるんだ!」とか叫ぶ。説得するつもりだ。

が、仲間たちは「お前は、俺たちを見捨てて、勝手に出て行ったんだろ」
「俺たちだって金がもっと欲しいぜ」「麻薬売って何が悪い」
「日本人には売るが、中国人には売ってない」
「お前こそ、刑事とグルなんだろ」とか言い出し、
ジャッキーを刃物で殺そうとするものも出てくるし、
止めに入った仲間(ラム・シュー)は頸動脈切られて死んじゃう。

「貧しい時は、あんなに助け合って行きて来たのに!
お前らを助ける為に人まで殺したのに! 俺が馬鹿だったんだ!
こんなことになるなんて!」

そこに日本人ヤクザが日本刀とナタ持って(そんなヤクザはいないよ)
100人くらいで「最後の戦い」を仕掛けて来ます。
忍者軍団か、カリオストロの城のジョドーの手下みたいな感じで。

で、真夜中の新大久保のビルで、
血飛沫ドバドバの無茶苦茶な戦いが展開される。
ヤクザ軍団はゾンビの群れみたいに、死ぬ事を恐れない。

仲間の中国人は、みんな惨殺。もちろんヤクザも多数死亡。
この戦いは、香港映画特有のヤリスギ感が。
それまでリアルな書き方だったのに。
まあ、クライマックスだから、しょうがないのか。

最後はジャッキーも死んじゃう。竹中刑事の見守るなか・・・
「貧しいけれど、みんなで助け合い、楽しかったころ」を
思い出しながら・・・新宿の地下道のドブに死体が流れて行く。

どーですか? ヒデェ話でしょう?
すごい映画ですよ。これ。
こういう映画が好きな人には、かけがえの無い大傑作です。


話のテーマは「仁義なき戦い」と似てます。
「貧しかった頃は助け合ったのに、金掴むと、もっと、もっと・・・で
破滅するまでやりすぎる」
「足ることを知れ」みたいな映画。「欲は人を食う」
「人間と言うのは、強欲な馬鹿な生き物である」
「流されない人間はいない。みんな流れて死んで行く」というのも
メッセージ。キツいですね。トンシン監督。最高です!

ジャッキーは「悪人」ではあるのですが、
「受動的」で「情に流されて道を踏み外す人物」でして、
頭もあんまり良くないし、ちょっとニブイ印象。
「いつものジャッキー」の延長線にあるような性格設定。
「能動的な悪人」じゃない。「流れてしまう人=普通の人間」。
で、最後まで「仲間」を大切にする、善良な兄貴。

そういう人物が、「状況に流されて、殺人を犯し、ギャングの頭目になる」
と、いうのがコワイんですね。リアルなのかもしれない。
悪人って、「なんとなく、そういうふうになっていく」んでしょう。
社会的なカセ・・・等に流されて。

いつものジャッキーと同じ性格なのに、
「違う状況、違う流れ」に流されれば、
こんなふうににもなったかもしれない・・・
そういう意味あいで、この映画が作られたのかもしれません。

ジャッキー、年齢は30代くらいの設定なんでしょうが、
ちょいフケすぎかもしれないけど、案外、違和感無し。
アクションはカンフーなし。リアルな感じに押さえてます。
演技力・・・は、よくわからない。「地」に見える。
いつものジャッキーと、そうは変わらない。アテ書きだろうし。
「そういう人物っていそうだなあ」と思える感じでした。

竹中直人は、いつもと同じ。ちょっとクサくて、変な感じ。
でも、ジャッキーと相棒みたいなビッグな扱いで、
全然タメ貼ってたから、凄い。
この人が夜の新宿に立つだけで「石井映画」に見えるのも、また凄い。

日本人役者はみんないい感じでした。みんな少しずつオーバーアクト。
香港映画らしくてよろしい。わかりやすいもんな。
ヤクザが全員、必要以上に暴力的で恫喝的なのが、なんだか笑える。

香港俳優は、ジャッキー映画と、イー・トンシン映画の常連みたいな
すごいメンバー。ジャッキー班が、みんなカンフーを封印。
いわゆる「演技派」と混ざって、全然違和感なし。
「みんなうまいんだなあ」と、思いました。


「惜しい部分」では、
日本の世の中に、不法滞在者を搾取して、平然と成り立つような、
「欺瞞」があって、それが「抑圧の原因」になってる・・・
みたいな「さわり」はあるんですが、
ジャッキーやその仲間と、「普通の日本人」はほとんど
かかわらないので、よくわかりません。
竹中直人の台詞でのみ、すこし表現している。

そういう部分がもうすこしあれば、もっと「社会派」になったのになあ。

最近では、日本より、中国の方が発展して、景気もいいので、
「新宿インシデント」は、ちょっとタイミングが遅かったのも、
残念と言えば、残念ですね。

まあ、なんつうか・・・・、簡単に言って・・・とにかく・・・
「黒い香港映画」や「実録ヤクザ映画」が好きな人は、見た方がいいです。

次男坊の感想。
「ハードなヤクザ映画だった。すごい映画だったけど、
ジャッキーファンが見たら、怒るんじゃないの?」
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by uorya_0hashi | 2009-05-03 11:12 | 映画関連