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ある子供雑誌の新年会

ある子供雑誌の忘年会。
これは、たいてい、ほかの雑誌と合同で
大々的に、ホテルで立食パーティをやります。
それは豪華。すごいものです。

で、新年会は、
毎年、東京のはじっこの温泉が出るヘルスセンターでやります。
お風呂入って、大広間で宴会です。
3度ほど、行きました。もう5.6年前かな。

大広間に、120人くらいの宴席がもうけられ、
適当に座るのですが、どういうわけか、
20人くらいいる漫画家は、スミッコのほうに座ってます。
そこに座らされたということではないみたいなのですが、
ベテランの先生が、まずスミッコに座るので、
それを差し置いて真ん中に座る漫画家はいません。
編集の挨拶があって、宴会がはじまります。

大広間の舞台の真ん前や、宴席の前半分に座っているのは、
バンダイとかタカラとかオモチャメーカーのかたがた。
任天堂だのセガだのゲームメーカーのかたがた。お菓子のメーカー。
広告代理店のひと。アニメ会社。その他クライアント。テレビのひと。声優。
そういう方々です。
そういう方々が、一風呂あびて、浴衣に着替え、くつろいでおります。
名刺をとりかわし、「いやいや、なかなか大変です」とか
ビールをつぎあい、情報を一部交換して、親父くささ爆発の
「越後屋。そちもなかなかワルよのう」
「いやいや。御代官さまにはかないませんわ。がははは」
みたいな雰囲気をかもしだしております。

漫画家は、スミッコで漫画家同志で歓談。

でも、景気のいい人は、声もでかいですな。
「よお! ○○ちゃん。ベンツ買ったんだって?」
「いやですね。もう知ってるんですか? 買ったといっても、中古ですよ」
「ベンツはベンツだろ。すごいねえ。ナンジャラとかいうホビーのおかげだな」
「いやあ。ははは。まさか、あんなに当たるとは思いませんでした」
編集者A(主流)がわりこむ。
「いやあ、○○先生ががんばってくれてるからですよ!」
「うん。まあね。ウフフ。」タバコの煙りが口からフーッと。
「ねえ、Aさん。俺のやってるカンジャラのブームも落ち着いてきたし・・・。
そろそろ次の企画の話が出てるんでしょ。
今度ドータラとかいうオモチャが出るでしょ、あれをぜひ俺に・・・。」
「もちろん。編集部では、いろいろ考えておりますですよ! ウヒョ!」

そこから、ちょっと、「下座」では、景気のいい先生たちのアシスタントや
時々手伝うような新人漫画家がひそひそ話。
「俺、月曜から○○先生のとこ行くんだ。君、呼ばれてる?」
「ああ、行くよ。で、君さあ、ドータラの漫画、描けって言われてない?」
「言われたよ。編集のBさん(主流)から。たぶん、コンペをやるんでしょ」
「うーん。そろそろ僕も、漫画で一本立ちしたいし、今度のドータラの企画は
なんとかしたいなあ」「同じだよー」

横で聞いてるまた別の新人は「俺なんて、そんな話、降って来ないよ。
なんか描けっていうから、持ってくけど、もう7.8本ボツだよ。
前に載ってから、もう1年半たつよ」
「あー。俺もそう。もうさすがに疲れたよ。結局、企画ものしか
やらないんなら、なんか自由に書いて来い・・・とか言わなきゃいいのに」

そこにまた別の編集C(ただし反主流)がわりこむ。
「そんな根性のないこと言わないで。
ホビーの企画なんかより、漫画独自の展開(オリジナル)で読者を引き付けないと。
うちはあくまで漫画雑誌なんですから。がんばってくださいよ!」
「・・・・・・。はい。がんばります!」

いろんなこと言ってますが、漫画家も「なにかの企画もので一発あてたい。
いい企画降って来ないかな」と、思ってるだけに見えます。
おおざっぱに言えば。(俺もそうだったりしますが。ははは)

「いやいやいや〜! みなさんお待たせしました! 余興の時間です〜」
舞台に、田吾作な格好をした若手編集者あらわれる。
「まずは〜! ○ンダイのナンジャラ担当の△△さん〜!」
「えーっ! 俺が最初? そんなあ」
とか言いながら、カラオケだの腹踊りだのが始まります。

あんなの、「やれ!」と突然言われたら、やだなあー
と、思いましたが、杞憂です。
漫画家なんか、絶対、指名されません。

舞台に呼ばれるのは、真ん中と前のほうに座ってる
メーカーとか代理店の方々ばかり。
親父ワールドだけで盛り上がっております。
「へえ。セガの◇◇さんって、あんなくだけたとこあるんだね」
「おい、うちも負けるな! お前(部下)、もっとおもしろいことやれ!」
「がはははは!」「どはははは!」「ぶひゃひゃひゃ!」

漫画家は、ずっと、スミッコで貧乏臭いヒソヒソ話。
あるいは、狭い世界での自慢話をくりかえしております。

ああ。
そん時、思いました。そういう光景ながめてて、つくづく。

この雑誌、「漫画なんて」オマケなんだと。
新年会に漫画家呼ぶなよ!  メーカーとかだけでやれ。
貧乏な漫画家たちも、「ついでに」呼んで
「あやつらにも酒と飯をふるまってやれ」みたいな
扱いは、かえって問題あるだろ!
士農工商とか、思い出しましたな。
______________
以下つけくわえです。

この文章、なにが言いたいのか・・・って、言うと。

この雑誌の主役は、もう全然「漫画家じゃない」ってことです。
雑誌に「広告出してくれる会社のひとたち」が主役。
漫画家は、そういう人達から、降ってくる「企画」を
待ってるだけ・・・に、なってます。
それが、この「新年会」によく表れていたってこと。

世間のヒトは「漫画雑誌の主役は漫画家」くらいに思ってますが、
ぜんぜんそうじゃない。この子供雑誌では。そう見えました。
それは「大昔」の話なんで・・・。

持ち込みはじめたばっかりの新人漫画家のひとが
「児童漫画に対する熱い夢」とか「トキワ荘を夢見て」みたいな
話を、僕にしてくれることが最近あったのですが、その時は
「いやあ。その思いは大切だよね!」くらいしか言えなかった。

なんで、ああいう半端なことしか言えなかったかなあ・・・。
かえってマズかったかも。人生ムダにしちゃいかんなあ。
とか、思いまして、その子が読んで、
なんかヒントになれば・・・と思って、この文章を書きました。

どうも、言葉たらずで・・・そのせいで、
人に迷惑かけちゃいかんなあ。と、後で、反省して、
この文を、つけくわえます。
by uorya_0hashi | 2005-11-08 11:56 | 漫画関連
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