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ジングル・オール・ザ・ウェイ

を、クリスマスに家族で鑑賞。
ずっと前に、LDを買っていたのだが、次男坊が、ずっと
サンタを信じていたので、うちでは封印されていたのだ。
で、どうも今年あたり、サンタについていろいろ気付いてしまった
様子なので、もういいや…と解禁。

お話のスジは、こんなかんじ。
最近、忙しくて、家族をほうりだしぎみのパパ(シュワ)が
そのつぐないのため、息子のほしがるターボマン人形…超人気でどこも売り切れ…
を、ゲットすべく、ちょっと頭のおかしい郵便局員シンバッドを
ライバルに、街中で大騒ぎの争奪戦を展開するが、失敗の連続。
大失態をやらかし、息子とママに見放される。壮絶などつぼ。
しかし、ひょんなことで、本物のターボマンの役者と間違われ、
空飛ぶギミックのついたターボマンの扮装を着込むはめに。
いっぽうシンバッドは悪役の扮装を強奪、シュワの息子を人質に…。
ついに、ターボマン=シュワと悪役シンバッドの、
漫画みたいなスーパーバトルがはじまる。

いい大人が親馬鹿まるだしで、オモチャをゲットすべく
醜い争いを延々と続けるこの映画、
体温の低い、日本の「ヤング」には、まるで受けず、馬鹿にされるだけ
でしたが、これは傑作です。うおりゃー的には。

わが子のプレゼントのため、ほしがる商品を求めて
町中を探し回った‥という、親ばかな体験を持つパパママなら
いやでも感情移入してしまう、その設定も、あざとくていいのですが、
それよりも。
イイ!  と思ったのは企画意図。

はじめは、まともな大人だったシュワが、
頭のおかしいシンバッドとの争奪戦にひきこまれ、
ルーニーチューンのパロディのような狂った世界まで暴走する…
この映画は、基本的に生身の人間を使って、
黄金時代のスラップスティックギャグアニメを再現しようとした
映画なのであります。

サイレント時代には、軽業師など、身体能力が優れた人間が
自らの肉体を「単なる道具」と規定して、残酷な笑いを
情け容赦なくふりまいていたのがスラップステック。
やがて、映画が音声を獲得し、
ドラマで見せることができるようになったので、すたれてしまった
のですが、50〜60年代に、アニメで、同じことを生身の人間では
できないくらいスケールアップして見せてくれたのが
バックス・バニーをはじめとするルーニー・チューン。
いわゆるワーナー・アニメ。5.6分の短編ですね。
これは、アニメの舞台がテレビに移ってしまい、テレビでは
動きより言葉で笑わせたほうがウケるので、すたれてしまいました。

でも、90年代あたりから、ルーニー・チューンなどの
再評価がはじまり、スピルバーグなんかが映画でオマージュを捧げ、
スラップスティック的なものが見直されてきました。
スラップスティックができる身体能力をもつ役者は、もう香港か
中国あたりにしかいないのですが、
「どんなにヒドイ目にあっても、死なないくらい身体が丈夫」…という
感じは、シュワちゃんにぴったり!
シュワちゃんでルーニー・チューンをやれば、絶対受ける!
そう考えて、出来た映画です。これは。

シュワちゃんの映画は、ほとんどすべてが漫画を実写でやってるような
もので、そう思って楽しまないと腹がたつだけ…というものが
多いのですが、もうこの映画は、そういう意味でドハマリ。
漫画路線の最高傑作!
(そういえば、シュワちゃんには、サボテン・ジャックという
ロードランナーのオマージュ映画もありましたね)

シュワパパ、頭の中が、小学生以下に退化します。そこが大笑い。
子供映画として、じつに素晴らしい構造。
で、その暴走ぶりに、観客があきれかえるころに、ハッと我にかえり、
「俺は何をやってるんだ。大人として恥ずかしい。もう俺は駄目だ」とか
反省するのですが、いろいろムカ〜ッとくることが起こると、
もとのもくあみ、暴走が始まります。物凄いバカ。反省はどこへいった?
まるでハルク。まさしくシュワちゃんのための映画!
こういう筋肉体育会系単純馬鹿を「愛する感性」がないと、
この映画は駄目です。お客を選ぶ映画。

若くて、神経質で、親をうとましく思ってるような人には
反吐が出そう…かもしれません。
アメリカ人には、こういう暴走野郎を愛する感覚の人が多いみたいですが
「世間に迷惑=ソク悪人」の日本では、ダメでしょうねえ。
サイコーなんだけどなあ。

クライマックスのターボマン・バトルは、CG全盛の今、見ると
ちょっとチャチイですが、笑わせるツボをおさえて、
定番ギャグをカッチリかませてくれるので、たいしたものです。
ターボマンかメテオマンか? というくらい好きだなあ。

高校1年と小六の息子は、シュワちゃんのムチャクチャぶりに
はじめ当惑しておりました。家族に見放されても「当然だよ!」
という感想。でも、そのあとの落ち込みぶりに同情し、
最後は応援する…という流れ。おもしろがっておりました。

シュワちゃんの奥さんも、安っぽく描いてなくて、
シュワちゃんの何十倍もしっかりした奥さんで、そこも感心した。
ファミリーものは、奥さんを「良く」描かないと、ダメなのですが、
出番は多くないのに、ちゃんと「しっかりしている」って、わかる。
なかなかいい。家族の夢だな。一種の。
ジングル・オール・ザ・ウェイ_b0019643_17324188.jpg

# by uorya_0hashi | 2004-12-29 17:32 | 映画関連